「防災士」取得講座を体験 (2008年3月30日付け 読売新聞大阪本社『減災』から)

    ■「地域で生かしたい」熱心に

    全国で2万2983人登録

防災士は13年前の阪神・淡路大震災を教訓に生まれた制度。震災では、がれきに埋まるなどして救助された3万5000人のうち、8割近くが市民に助けられたことから、家庭や地域、企業、団体などに専門的な知識を持つリーダーの必要性がクローズアップされた。
大災害に備え、活動をし、災害が発生した際には、住民の避難誘導や救助・救命、避難所の世話などに自主的にあたり、ボランティアと協働する。
防災士機構が認定した民間の研修機関による研修カリキュラム(31講座)を受講するか、自治体などが実施する研修を受講したうえで資格試験に合格、消防署などの救急救命講習を修了した者に資格が授与され、3月末現在、全国で2万2983人が登録している。

記者が受けたのは、うち7割が受講している防災士研修センター(東京都千代田区、03・3592・5051)の「大阪3月コース」。定年退職した団塊の世代や、郵便局長や地方自治体職員、主婦、大学生など19歳から66歳までの63人(女性8人)に交じって受講した。

初日は3時間の座学が続いた後、演習。8班に分かれて、「DIG」と呼ばれる災害図上訓練に取り組んだ。狙いは「災害を自分のこととしてリアルにイメージする」。ある町の地図と被害想定図、ハザードマップが用意され、「秋の過ごしやすい休日の午後2時」という想定で行われた。

まず、自宅を地図のどこかに決め、海や川、池、湖などの地形、道路や鉄道などのインフラ、避難場所を違った色で塗り分け、「要援護者宅」に印を付ける。消防署や警察署、公共施設、病院なども色違いのシールでマークした。こうしたうえで、この町の特徴をカードに書き込み、みんなで話し合った。

次に、地震の大きさや津波、洪水や土砂災害が想定される個所を塗りつぶし、自分の家がどんな被害に遭うかを話し合い▽個人や、わが家でできること▽職場など周囲の人々や地域の人々と協力してできること▽行政と連携してできること――を考えた。

阪神大震災を体験した神戸市東灘区の建設業、山下共子さんは「建設業者として災害時に出来ることを考えるために受講しています。役立つ知識をたくさん得て帰りたい」と話していた。

災害図上訓練で知恵を出し合う研修参加者ら
(3月7日、大阪市北区で)

2日目の「都市防災・市民防災」など2時間を講義した渥美公秀・大阪大学准教授は阪神大震災での避難所の実態や、昨年の中越沖地震でのボランティアの活躍などを紹介しながら、「地域を愛すること。好きやねんこの町が、という気持ちが、地域の防災活動には一番大切」と説いた。

最終日には、村井雅清・CODE海外災害援助市民センター事務局長が「ボランティアと防災士の皆さんが協力して減災に取り組まなければならない」と強調した。

「避難所の開設と運営」の演習も8班に分かれて行われ、「大規模地震が平日の早朝に発生、近くの小学校に約200人の人が避難している」という状況下で、町内会の代表として避難所の開設をどうするか、学校の見取り図を前に考えた。「高齢者や要援護者に配慮すべきことは」「観光客や外国人には」「ペットは」などのポイントを話し合った。ペットをどう扱うかや仮設トイレをどこに配置するかなどは難問で、個人、班によって様々な意見が出された。

演習では決まった正解がある訳ではない。様々な意見を出し合って他人の意見を聞くことも大事とされる。こうしたことを事前に地域や学校などで十分に話し合っておくことが大切と教えられた。大阪府吹田市の近畿大4年広中省吾さん(22)は「将来、消防士か警察官になりたい。知らないことを学べるいい機会だった。地域に帰ってこの知恵を広げていきたい」と話した。
資格取得試験は50分で30問。3択式で21問以上正解すれば合格する。防災・減災の基本的な問題が多いが、数問は少し難易度が高いように思われた。

救急救命講習は後日、神戸市防災安全公社主催の「救急車が来るまでに 市民救命士講習」(3時間)を受けた。

講習には、約50人が参加し、人工呼吸と心臓マッサージ、AED(自動体外式除細動器)を使った心肺蘇生(そせい)法を実習。事故や病気により心臓が停止した場合、約4分で脳に重大な障害が発生するとされ、近くに居合わせた人による適切な応急手当てで救命率が飛躍的に上がることを実感した。

(2008年3月30日付け 読売新聞大阪本社『減災』から)

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